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  「何か」を残すための備忘録ブログ
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 三月一日。

 どよめく朝に、起床。目覚めは覚束無く天気は四部の曇り。
 シャワーを浴びて支度を始めるころには雲の隙間から陽が差し込む。レンタルパソコンを閉じ込みフロントへ返却した後で、チェックアウトを済ませた。
 美栄橋へ向かったところで友人Kと待ち合わせの電話をつけた。沖縄の海を彷彿とさせる鮮やかなブルーのマーチで路肩に現れ、飛び乗って発進。幸先はいい。
 この日は南部へ車を走らす。朝飯にポーク卵おにぎりとLG21を買い込み、この日も車線変更時にウィンカーを上げない仕来りに驚愕と感嘆を口にして、斎場御獄を目指す。左手に東を望み、海がが広がる道路に出るが、運転手のKはそれどころではなく集中していた。「俺はひとつのことしかできない。」
 遥か遠い南西の海底に築かれた遺跡として、ニライカナイという名前と信仰概念は存じていたが、その名を負う橋の大きなカーブを駆け上がった折りのパノラマは、橋下駄と気団空間の配置がすばらしく、海と空の眺望に感動した。登りきるとトンネルがあった。助手席から窓の外に手を放り出し、デジカメで二人と車内を撮影。この時、半そでのTシャツ1枚である。
 斎場御獄へ到着する時には少し晴れていた。「斎」という字が宗教字ということは知っていたが、神聖な場所というのは、土地柄あいまって、陽が入らないイメージがある。まるで崖のように背の高い、堀し出した岩肌から伸びる鍾乳洞あるいは「酸化雨」にただれた金属のような質感・表面の二本の岩先から滴る雫と受け壺いう呪術的場所。大きな一枚岩が二枚、もたれかかる様に立てられ、穿たれた空間の先から回析する光がトンネルの奥行を長たらしめる「三庫理」。そこを通って見える物見からの景色は、緑が額になる天然のフレーム。海が映える。
 「烽火三月」とはまさにこのことであった。
 斎場御獄を発ってからは、有刺鉄線が立ちはだかる沖縄刑務所の前を通過して、ハーブを使ったアジアンカフェ「くるくま」に向かう。アセチレンボンベがある駐車場は満席で、すこし距離を置いた場所に駐車。有名どころには人が集まるので、入店できるまでの待ち時間に大きなクリスタルを見たりアンモナイトの化石に手を触れてみたりした。ウミガメがいたり、黒猫がいて、なついてくる。二酸化ケイ素化した木の化石「珪化木」から成るテーブルをなであげては、感動する。雨ざらしながら、なんとも素敵なテーブルである。
 カフェではカレーとナン、それとハーブを使ったサラダで昼餉。案内された席は窓際で海を一望できた。青空と海は、いい。
 大食いに自信がないわけではなかったが、サラダは食い上げきれなかった。初日のこととあいまって、悔やまれる。非力さを痛感。
 三基のうち一基しか稼働していない風力発電のユニットを見ると、南部らしい「死」を感じた。
 午後になって平和祈念公園へ車を走らせると、仲村渠という地名が道路地図に書かれてある。苗字がもともと土地や屋号に由来するものだとは思っていたが、沖縄はそれが多いのであろうか。儀保もそうである。
 到着後すぐに献花と線香を売り込むおばちゃんがいて、それを受け取り宮城県の戦没者を祀る「宮城之塔」に献上した。入口からは遠い場所に置かれてしまったが、海に付し、風が気持ち良い箇所であった。
 都道府県別の祈念碑が並ぶ中で、一際立派な塔がある。日本列島改造論を唱えた田中角栄を誇る新潟である。何がなくても道路がある新潟。権力を感じる。
 そして、名前。あれほどの名前が並んでいると、体の芯から震えてくる。南部には死霊やそれの祈念の、どこか死者を身近にというか、肌身に付すかたちで置くような文化を感じる。(帰京してから新宿で辺野古についての本を手に取ったが、糸満の集団自決の数は軍を抜いていた。再訪する時は文献を読んでからにしようと決めたので、また違った見聞になるのだろう)
 弔いの名前は何万人と碑に掘られているが、端数が無い。綺麗に五百人単位であることから導き出される解答は、未知数、変数、不明数。
 そして、海を見た。珊瑚がある浅瀬は色が明るく波が穏やかであるのに対して水深があるところは色が群青で、境には白波が立つ。某所の建物の中で、垂れ流しのVTRから泡盛が何たるものかを知った。
 その後、ひめゆりの塔へ向う。
 ここは、気が滅入る。黒の質量体が歪(ひず)み発生させるように、特異点へ向けて心が落ち込んでいく。落ち込む。壕と死臭、ひめゆり学徒、解散。一人一人の性格が一言添えられた顔写真が並ぶ部屋には、心打たれた。生き残った住民のコメント映像も浸み入る。小学生の折に、生存した女性を体育館に呼びあげて話をしてもらう機会があったが、やはり実体験ある人の口から語られる戦争の実情というものは凄惨なものだ。戦略や戦争の経済学を忘れさせる程に心を黒くする。この場所が最も、戦争を自分の中に取り込める場所だったと思う。東風平は読めたが、以前は読めなかった南風原という地名がひどく心に残った。
 ひめゆりの駐車場で気分一新、ジェラートなんかを吸い上げながらサトウキビ搾取器を見たりした。
 日が暮れてきた頃に、瀬長島に行き、橋の中腹に車を停める。腹を見せて真上を飛び行く飛行機と轟音。近場で見れば見るほど、巨体である。
 大して腹が減っていないという二人は何も食わずに、tiltが出演するライブハウス「k-mind」へ向かう。帰宅ラッシュが始まって道が混んでいた。場所を確認した駐車場の具合を尋ねると「田園書房を使うといいよ」極東ピーコックというバンドである。素敵。
 一見さんへの説明は「銀杏BOYZテイスト」は確かに感じられるが、一線を画していてかっこいい。ティッシュを配るというオノチンよろしくを見せ、口ベタと伺えるボーカルのMCがあると思いきや開放弦のみを用いた音符をアシンメトリーに配置したようなリズムフレーズは実に見ごたえがあり、Still AwakeのPVの様に後でパート別に再生したくなる。かっこいい。ベースはやはり黙々と、虎視耽々とフレーズを埋めていた。大史も同様で、私とは正反対のタイプである。群青日和が一番速いと言っていたtiltが16分を刻んでいた。面白い。ハルキタイム。実に面白い。
 ライヴ終了後、一寸の時間tiltとDが話をする時間があった。

 ホテルにチェックインし、一段落付いたあとその日撮影した写真をSDカードからUSBフラッシュメモリに転送しようと、ロビーの隣にあるパソコンに向かった。USBハブのフロントポートが狭く、正面に用意された2つのポートはまるで使えない。仕方なくラックに納まる筺体をひねり上げ、マウスをフロントポートに接続し、SDカードをバックポートにねじ込んだ。
 フリーズ。強制終了を、バディー・リッチが降霊したtiltよろしくで連打。
 「馬鹿が」とつぶやき転送を諦め、配線を戻して部屋に戻った。
 馬鹿は自分である。


                              再拝

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 二月二八日。

 この時期は半袖のTシャツ1枚で過ごせるほどになっていたのでラグの上で荷物のなにかを枕に睡眠。いざとさあいまって、三人の中で最も早く起床すると、タオルケットをかけてもらったことに気がつき、昨日の食の仕打ちの後とは思えない朝であった。
 時間になったら起こすようと賜っていたので声をかけると、「あと五分」といぎたなく寝がえりを繰り返すtiltと「起きて」というその彼女が、神々しいほどに眩しい。後光に心を洗われる。ふと気がつけば、朝日である。
 人は寝起きを阻害されるとカニバサミで応戦するらしく、ベッドの占有率の訴えももはや聞く耳持たずに棄却される。
 この日は皆別行動となる。国際通りに行きたいとのことで、車で牧志駅に着くのは昼下がりに思える午前。駅のコインロッカーにキャリーケースを預け、散策のスイッチが入る。まずモノレールに乗ってみたいと、ゆいレールの一日乗車券買って県庁前に行く。官舎を端に伸びる国際通りの入口はおきなわ屋で、写真を撮ったり送料の安い土産屋を探しに一軒一軒見て回る。スタイリッシュなファミリーマート。すべての泡盛を見ているうちに試飲と試食の延長が示唆され自重の文字が脳裏に灯され始めたが、やはり一日置けば食欲は回復するもので様々な琉球食文化をつまむ。この日はYSLの白いシャツにベルボトム、そして前日に琉球村で買ったばかりの首飾りでハンチングをかぶった格好だったが、それが明確なないちゃーだという記号になったようで「お早う!絶対沖縄の人だよね?」と元気なはいさいおばちゃんに声をかけられる。意図が手に取るようにわかった。新宿アルタ前でのようなあしらいをして回避すると今度は「また来てね」とすれ違ってから背中に言われた。沖縄のイントネーションは、染みる。この「また」とはもちろん、沖縄に、ということであるに違いない。沖縄の人は、いい人だ。それを都会と同じ意図として汲み取ったことが恥ずかしくなり、復路ではどもる少年のような気持ちでその店に入った。日本一面白いTシャツ屋という看板があちこちに目がつく国際通りは御徒町のような特徴をもっていて、トヨタの外国人村とも言うべきか、独特な胡散臭さもある。御徒町のような「タラバガニが三杯で五百円」という極端な例は無かったけれど、そんな街がよかったりした。中に星の砂が入った浮き玉を買った。
 お昼を決めるために足をとめパンフレットを見ていると、おじいちゃんに声をかけられる。「どこに行きたいの?」お昼をカフェで食べようと思っていて、今探しているところなんです、と言うと、「かふぇ?」
このおじいちゃんはカフェを知らないらしく、珈琲を飲む場所、喫茶店のことだと説明すると「コーヒーならそこの三越の隣にあるから、そこ行きなよ」と精いっぱい説明してくれた。お節介というか、よく声をかけられたのを記憶している。そのカフェには行く気になれず、雰囲気のいい路面店でパスタを食べる。東京と変わらない値段であった。
 食べ終わった後、波照間に電話をかけてみる。前日にA&W、ソーキそば、タコライス、ポーポー、ブルーシール、サーターアンダギーを食べたよと言うと「沖縄全部食べてるね!」と言われ、にやにやとしたり顔が同居したような顔つきで闊歩した。「あぐーを食べてないからそれが食べたいねー」なんて会話のあとに、おきなわ屋本社でお土産を買い、首里城へ向かうことを決める。スカートにくるぶし丈のソックスをはいた女子高生が目に新しい。
 街を歩いていてもゆいレールに乗っていても、ないちゃーに間違いないという目で見られる。初日のA&Wではテーブル席にいた女子高生四人組の目が一番最初でだった。沖縄っていいところですねー。
 首里駅で下車し公園のような丘をのぼって順路に応じて歩みを進めると、街の景色と海が見えた。生憎の曇りではあったが、灰色の空と煤のようなくすぶった遠くの海との境がなくなりそうで、三つの色がモノトーンで絵になった。
 中山王の尚巴志が北山南山を統一した後の居城、マンガの前田慶次で出てきたワード「うぇーかた」。修繕工事をしていたが、マネジメントはよろしいので、格段気落ちすることなく見てまわることができた。正殿の上階からは御庭(うなー)を一望でき、ここから王政の号令をかけていたのだろうかと思いつつ御座や御冠をまじまじと味わう。柱に描かれた竜は、照間さんから教えてもらったシーサーの話と同様に、口の開閉が見受けられた。本殿から斜角をつけて敷かれる道は、国王を正面から見れないようにするためとのことと聞く。尚一族の家系図やジオラマもあり歴史に触れる場所でありました。
 皆朱の槍を思わせるような見事な朱に感動。戦火を受けるにはあまりに惜しいものであります。
尚寧についての記述を見落としていたのか、あるいは探せなかったのか、それが心残りであるので再訪希望。
 日が落ちてきた頃に首里城を出る。儀保という表札を見ながら城のまわりを一周しようと歩いていると、煙草をくゆらすタクシーの運転手が声をかけてくれた。外見の要素は大きい。どこへ行くかを尋ねられ首里駅に向かっていると告げると「相乗りでいいなら150円で連れてってあげる」と言われたが、生憎散策をしたい身なので丁重にお断りする。それでも食い下がらない運転手。お節介なのか、優しさなのか。利便性をすこしでもとろうとするぶん勧めるうちなーと、普段利便性の粋の恩恵を享受しているぶん今回はそれを放棄したいないちゃーとの相互誤解。度が過ぎなければ興が乗るのだが。
 きっとあそこが首里高校なんだろうと思いながら散策を終え、ゆいレールでおもろまちへ向かった。国内では特別免税のDFSへ立ち寄り、ブランドが軒を連ねる中を視察。入口の一等地はGUCCI。水流のトンネルを通り、コスメエリアが広がっていた。ルイ・ヴィトンはやはり免税価格ではなく、国内価格と同一であった。免税のためのチケットの手続きもしなかったので見るだけ見てホテルのある美栄橋へ向かった。
 チェックインの際受付の女性の名札に仲村渠とあり、珍しい苗字であるので姉妹かと思い浮かんだ。部屋に入ってからはどんなご飯を食べようか考え、パソコンをレンタルしお店を探した。一寸距離をおいたところによさそうなカフェがあったのでそこへふらふらと流されていった。「東京から来ました」なんて月並みな会話をしながらピザを食してどこぞのサンピンのような足取りでホテルまで戻った。すべきことがなくなり、身動きもとりにくくなったので、寂しい気持ちに駆り立てられた。この状況の中の電話が差し伸べてくれた安堵感は計り知れない。
 洗濯を済ませそれをドライヤーで強引に乾かし、ふと眠りに就いた。
 二月の末日のことである。

                           再拝

 順応という反射は、自己のあずかり知らぬ所で行われているものであります。

 pです。皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 二月二六日。
 丸善丸の内店へ。セレクトブックストアといえるのは、今でも丸善の株は百貨店系列に分類
されるからであり、店員もスーツでレジに待機する。関西の出版社が京都の観光ブックを丸善のみを販売経路に期間限定発売ということで、購入。るるぶとはまた違って、内容も洗練されている。そのまま大丸の都路理でお土産を買い、中央線快速で降りるは新宿。友人とボーリングを練習する。カーブの精度が村井君のドラムのような不安定さで、実戦では使い物にならない。「糞がっ」と言っていると、1ピンストライクイベントで1ゲーム無料券を獲得。
 その後、同級生と新宿東口で待ち合わせ。店が決まっておらずアルタ前をフラフラしている
一行に、珍しく端正なキャッチが来たが、1600円飲み放題に対し「三桁がいいなぁ~」などと浴びせ、鍋コースをひたすら値切る。しつこいまでの追い込みをかけ、限界まで達したところで「さぁこれからどれくらい安くできます?」と真に追撃し、「じゃあ、他の店にしましょうか」これが私が刺したとどめの一言。
 梅酒を舐めながら語るは色について。池袋のホテルを何軒回ったとか、外での青い経験があ
るかとか。皆、色と性を識る。
 カラオケ徹夜を乗り越え、リムジンバスに乗って羽田空港へ。

 二月二十七日。
 物心ついてから初めて乗る飛行機に一寸楽しさが混じった緊張を覚えながら、搭乗手続きを
済ませる。機内に持って行けるサイズのキャリーケースをやはり預け、手荷物検査も無事にパス。沖縄で待つ友人へのおもちゃのプレゼントがネックだった。
 急遽搭乗機体が変更になり、予約していた窓際のシートとは縁が無くなった。天候にも恵ま
れず、離陸も遅延。バス出発前に、「今日の夢でさ、誰かが飛行機墜落で死ぬ夢を見たんだよね!それってpのことじゃん!」と告げられ、前途一抹では収まらない不安がよぎる。

 初めて体験する加速とG。慣性系の中では平時と同じ環境でも、やはり鋼の翼は時速1000キ
ロに達する速度で運動しているので、異変は感じる。手術を終えて車で帰宅した折、時速60キロで術痕が開きそうになったことを思い出したりしながら、京都の本を読んで仮眠をとる。
 到着後、空は晴れていて、青い。きれいな青と、きれいな海。青い海というよりは、マリン
グリーンとでも言うべき色彩に発する言葉はひとつでありました。
 11時。空港まで、tiltに迎えに来てもらう。彼の彼女とも初対面。三人でトッポBJへ乗り込
み移動する。車内のBGMは東京事変であり、晴れた青と暖かい車内が都会にはない新鮮さを与えてくれる。ダッシュボードにはさんぴん茶。どこまでも気持ちがいい。
 A&Wというファーストフード店で、よりアメリカナイズされたジャンクフードにありつく
。前からここのカーリーフライなるものが食べたかったのでコンボで頂く。コーラに毛が生えたようなルートビアというドリンクが、これもアメリカンサイズなのか、ジョッキで提供される。ダメ押しに飲み放題らしい。tiltは相変わらずマヨネーズが苦手なようであったにもかかわらず白さ際立つバーガーを注文していた。結果、半分ほど食べたところで私のピリ辛ドックと交換。マヨネーズがきのこの風味を際立てていた逸品であったし、彼もそのドックをなんなく食した。共通点として、彼の彼女もマヨネーズが苦手のようである。
 午後の予報は曇り。空気と空の表情がざわつき、スコールの前兆を推測しながら、「pさ、海
見たほうがいいよね」と、青空冴えるトロピカルビーチへ一行は向かう。coral reefを手にしたり、tiltにナマコをつまんでもらったり、立ち小便をしているどこぞのサンピンを横目に、水平線を臨む。ビーチであるのにもかかわらず、磯の臭さがないことに関心しながら「靴に砂が入るねー」なんて平成ドラマのようなシチュエーションの中、革靴には不得手なゴツゴツした岩場を歩いて落ち付いた時間を過ごす。
 58号線を走りながら、住宅様式としてコンクリート打ちっ放しの家が多いことに気がつく
。たしかに、この風土において台風は猛威らしい。
 そしてブルーシールというアイスクリーム店で美らイモとキャラメルマキアートのダブルを
ワッフルコーンで腹に入れる。元来さつまいもが大好きなので、イモ類テイストがこの上なく美味く感じられる。そこに女性二人が駆けつけてくれた。半年ぶりの仲村渠さんは相変わらずめんこい。
 メンバーが五人になったところで、琉球村という観光地へ車二台で走る。前方の車班の、後
車の追随を弄ぶような運転に楽しみ半分心配になる。無駄な車線変更。黄色信号の置き去り。後で声をかけてみたところ本人はわりと気づいていないようで、前方の車班二人はそれすら見越していたようであった。車線変更の際ウィンカーを出さない沖縄の交通倫理はどうかしているのであろうか。
 琉球村には高名な氏族の遺構があった。風通りのよい建物のつくりやウィンドプルーフな瓦
は、先聞の通りで、実物を目の前にするとやはり良い。照間さんのシーサーの口の開閉の話が素敵であり、首里城でもそれは見受けられるものであった。あと一人加えて、私が知っている沖縄生まれの三人は、皆琉球らしい名前である。
 泡盛に漬かっていない、生きているハブがいる小屋や、マングース小屋があるゾーンは密林の
ような環境で、緑葉植物の独自性と風土を感じながらハブの土産屋という一寸場違いな一角でtiltがはいていたサイズの小さなサンダルと最適なサイズを比較照合したりした。
 沖縄の各地でサーターアンダギーを食べたが、この琉球村のものが一番美味しかった。外が
カリカリはもちろん中もふわふわもっちりしていて、サイズも大きく他のやさぐれたそれとは比べ物にならない。お茶で喉を通らせる。このあたりから「あれ?食べないの?」という無言の掟が定まる。
 ポーポーというクレープかワッフルの生地をロール状にした、なんとも腹にたまる菓子を詰
め込む。このポーポーが与える満腹感の印象が今でも強く残っている。注文を躊躇すると、即座に「あれ?pさん?」が飛んでくる。食べているところを見た他の観光客に「それ美味しいの?」と聞かれたが「おいしいですよ!」と言うだけいって、「お父さんもおひとつどうですか?」といつもの調子なら言い出せるものを、よほど余裕がなかったらしい。
 予想通り雨が降り出したところで、牛が圧搾機でサトウキビを搾っているのを横目に、豪快
に鉈を振り下ろし穿った箇所にストローを四本入れ、椰子のジュースを飲む。「癖が無い」と言ったところに「悪く言えば味がしない」と切り返され、たじたじになった。1リットル以上はゆうにあったのか、皆で飲んでも干せず、結局野郎二人で、最後まで飲んで水っ腹になっていたに違いない。
 同時に、椰子の果肉に醤油をぶっかけた一品が出てきた。これが寿司のエンガワに非常によ
くにた食べ物で、実に美味しい。芯がある部分では大根のようにも思えるものだが、柔らかい部分は本当にエンガワそのものであった。甘さがある分むしろやっかいなもので、本当に美味しかった。別腹であったせいか、小鉢に残った最後の一切れまで頂いてしまった。
 エイサーやカラフルな獅子舞を見て、陶器がトップのネックレスを買い、雨の琉球村を後に
した。濡れるの厭う内地の人は、車を入口まで呼び寄せた。
 夕方、てだこそばという、沖縄でも三本の指にはいるほどうまいと聞いた沖縄そばを食べた
。無論、泣く泣く大盛りで。沖縄そばといえども、質のよいものを食べれると、いい。質は、である。食べ終わった後、DIVE INTO DISNEYのようなコンピレーションアルバムを求めにビレッジバンガードに行く。車内はさっそく「星に願いを/When you wishu upon a star」をチューン。前作ではthe band apartが担当した曲である。avengers in sci-fiは、正直納得できないものであった。おとぎ話と相対性理論の声には、中毒性がある。
 間髪入れず、キングタコスで野菜とチーズがトッピングされたタコスを注文。プレーンなタ
コスに逃げることを阻止される。そしてこの日、生涯は初めて「食べるという行為それ自体に、飽きを感じた」のであった。スプーンで具材を掻き集め、口に運び、舌を噛まないように咀嚼し、飲みこむというこの一連の動作に伴う倦怠感が否めず、「食に苦労」した。腹も満杯という臨界点に近づいたところで、残すという途中放棄どころか、「こうまで時間をかけて食べているだけでも恥」という風潮をそれをなく感じたこともあり、最後の三口は四人に見守られながらであった。大食いに自信がないわけではなかったが、食に関して「頑張れ」と言われたのは初めてで、尊大な羞恥心あいまって救いを求める複雑な気持ちに落ち込んだ。
 店を出てすぐ、頑張ったで賞のような調子でUCC自販機より「霧の紅茶アップルティー
500ML」を頂いた。あまーい。
 夜は夜で、それこそ素敵であった。コンクリート打ちっ放しの内装に見紛う素敵な部屋で一泊。三人で文化祭のライブを見たりした。

 二月二八日。
 目が覚めると、タオルケットをかけてもらったことに気がついて、昨日の食の仕打ちの後とは思
えない朝であった。

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「こころ」
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・好きな芸能人
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松田龍平

・好きなドラマ
ハゲタカ
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・夢
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