「では、基本デバイスの説明をします。、、っと、その前に。えぇ、、、一昨年の年末に次世代大容量記録媒体として「Atomic memory」が開発されています。加速器を使ったアレです。こちらは原子の粒子一つ一つに情報を書き込むというシステムで、まぁ開発元より私の方が当然詳しいですし、「パテント」が成立して以来放置していたんですが、私が改良したところコピー率は「完全」になりました。トルハーにはこの完全版Atomic memoryが取り入れられています。ポイントは完全版でなければならない所です。博物館に行けばDVDなんてものがありますが、あれのコピー率なんかはイレヴンナインくらいでしょうか。綻びがあるわけです。このトルハーにはそれは許されませんので、改良は慎重に行いました。パテントは取ってないですよ。これから先、誰にも作れないと踏んでますから。」
研究員が会場に資料を配り終える。字面のみの資料も博士のあてつけであろう。
「トルハーは、分解、記録、転送、構築の四段階に分けられています。まずは分解。対象に高周波パルスレーザーや粒子光線、さらにはガンマ線、、、まぁ簡単にいうと複数の不可視光線をあてて原子レベルまで分解します。このとき同時に対象の構築情報を原子レベルで精密に記録します。この膨大な情報を記録するのに先のシステムが使われるわけです。無限に近い桁数の原子でありますから、「完全」なコピー率でなければならないのです。確かに俗の真似事では不可能なことですよ。開発には相当に、相応に、苦労しました。その、、、夢とうい燃料がなければ、今は無かったでしょう。まぁ本当に、「今」もここには無いんですけどね、ははっ。」
再び出かけた言葉を飲み込んだ。
「おっと、話を戻しましょう。続いて転送です。なんてことはありません、膨大な情報を光通信で送るだけですから。ただ現存のインフラでは不可能ですけどね。綻びがありますから。まぁ、そうして転送された完全な情報をもとに、復元構築をします。真空でなければ、空気等のなにかしらの原子が自由に存在する場所であれば同様にレーザーで行うことが可能なんです。、、以上が四段階の大雑把な行程です。シンプルですよね。ここまでの、スペックに対する質問はありませんか?」
会場からのレスポンスは無い。皆メモを取るのに必死だ。資料は読むのに時間がかかるため博士の言葉を書きとめようと決断したのである。賢明な判断であったが、それも博士の手のうちである。博士はさっさと会見に見切りをつけ、役割を与えられた自分の時間を獲得したかった。
(第三部へ続く)
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